チェスのコツ・勝つには?初心者にも分かりやすいゲームのポイント!
チェスは世界中のプレーヤーに親しまれており、ボードゲームの王様と言っても過言ではありません。ですが、日本では馴染みが薄く初心者の方にはコツが分からないという方が多いのも事実です。今回はチェスの基本を中心に、チェスのコツを分かりやすくご紹介します。
目次
ボードゲームの王様チェス

藤井聡太六段の活躍で将棋界が盛り上がっていますが、将棋に囲碁といったボードゲームは日本のみならず世界的にも人気の高いゲームであり、多くの人に親しまれています。また、メディアの報道や書籍コーナーの本の種類を見ても日本で最も人気のあるボードゲームは将棋と言っても過言ではありません。

ですが、世界は広いものでボードゲームの競技人口を世界に広げると圧倒的にチェスが多く、何と7億人もの人がチェスをプレーしており、ボードゲームの王様いうべき地位を確立しています。今回は、ボードゲームの王様であるチェスの基本とゲームで勝つためのコツを初心者の方にも分かりやすくご紹介します。
チェスの歴史
チェスのルールの前に歴史について解説すると、元はインドのボードゲームであるチャトランガがヨーロッパで発展したものであり、実に1000年以上もの長い歴史を持っています。その後時代とともにルールもマイナーチェンジが行われ、現代のものに近付いた15世紀からはチェスの本が発売されるなど当時から高い人気を誇っていました。
また、ゲームのルールや駒の動き方が将棋と似ている事もあって日本では将棋とともにボードゲームの定番として親しまれています。そして、将棋とチェスの「二刀流」といえば、羽生善治永世七冠は趣味として始めたチェスでも才能を発揮して強豪プレーヤーの仲間入りを果たし、日本最強クラスのチェスプレーヤーとして将棋とともに世界で活躍している事で有名です。
チェスの目的と勝敗の決まり方

全てのゲームに該当する事ですが、チェスの最大の楽しみであり一番の目的は相手に勝つ事です。分かりやすい例を挙げると、将棋で王将を逃げられない状態(詰み)にしたら勝ちであるのと同じで、チェスも駒を動かして王手(チェック)を掛け続け、最終的に王(キング)を逃げられない状態(チェックメイト)にしたら勝ちとなります。

勿論、チェックメイト以外にも勝敗の決まるルールがあり、劣性のプレーヤーが自身のキングを倒すなど降参のサインを示して自ら負けを申し出るリザイン(resign…投了)に、時間制限がある場合は持ち時間終了による時間切れで勝敗が決まるケースも少なくありません。
チェスならではの特殊ルール「ステイルメイト」
囲碁や将棋ではルールの上で引き分けは存在しても引き分けになる状態が起きる可能性が事実上皆無である事に加え、決着を着けるためのルールがあるので実際の対局で引き分けになる事はありません。ですが、チェスには引き分け(ステイルメイト)が存在するだけでなく、対局自体がステイルメイトで終わる事も多いため、チェスのルールを知った初心者が最も驚く要素です。
囲碁には後手に五目半のハンデ(コミ)があり、将棋は取った駒を持ち駒として使えるため更に相手を追い込む事が出来ますが、チェスは取った駒を持ち駒として使う事が出来ないためゲームが進む度に駒が減ります。なので、最終的に駒がなくなってゲームの続行が困難になり、チェックメイト不可能と判断した両者の合意によってステイルメイトで終わる事が多々あります。
コツを掴めば負けない!引き分け故の面白さ

ステイルメイトの起源ですが、プロチェスプレーヤーの貴族相手の接待チェスで自身も相手も誰も傷付かない結果として引き分けが導入された事が始まりです。また、サッカーのように「勝負事の引き分け」が文化として浸透しているヨーロッパのゲームらしいシステムですが、事実上引き分けのない囲碁や将棋に慣れ親しんだ日本人には違和感を感じるかもしれません。

ですが、自分より強い相手でも上手くやれば引き分けに持ち込める(負けではない)ため不利になったら引き分け狙いに切り替えられるなど戦略を幅広く持てるのがチェスの魅力です。格上相手に劣勢の状態から自身の戦略がはまって引き分けに持ち込んだ場合、勝負に勝った訳ではないものの戦略では勝ったという、結果としての勝利とは違う達成感を味わえます。
駒の名前と動かし方
チェスの基本とコツ①

囲碁や将棋と違って引き分けというシステムがチェスには存在するものの、勝負事である以上引き分けではなく勝ちたいと思うのが人の性です。相手に勝つという究極の目標を達成するためには、まずは基本を覚える事が大切です。そして、チェスを行う上で大前提となる基本が駒の名前と動かし方です。
チェスに使われる駒はポーン、ナイト、ビショップ、ルーク、クイーン、キングの6種類計16個と8種類計20個の将棋の駒より少なく、盤面も8×8マスで9×9マスの将棋より小さいのが特徴です。また、チェスも将棋と同じでそれぞれ駒の動きが決まっていますが、将棋よりも駒が少ない分覚えやすいので初心者には入りやすいゲームです。
基本的にはポーンは前に1マスだけ進める(但し最初の一歩目のみ2マス進める)から歩。ナイトはL字の形で1+2マス進め、更には他の駒を飛び越えられるから桂馬。ビショップは斜めに自由に進めるから角、ルークは縦横自由に進めるから飛車。クイーンは縦横斜めに自由に進めるから飛車+角。各方面に1マス動けるキングは王と考えれば分かりやすいです。
ポーンの特殊な動きを覚えよう!
チェスの基本とコツ②
チェスは基本的な駒の動きは将棋と非常に似ている上に複雑でもないため初心者でも将棋経験者でなくてもコツを掴むのは簡単です。但し、細かいところではやはり大きな違いがあり、駒の基本であるポーンには特殊なルールが複数設けられています。
駒の取り方の基本ですが、こちらも将棋と同じで基本的には駒の進行ルートに敵の駒があれば取れます。ですが、前に1マスだけ進めるポーンは同じく前に1マスだけ進めて、前のマスに駒があれば取れる将棋の歩と違って駒を取れるのは斜め上のマスにある場合のみと少し複雑で、基本を覚える際に初心者が詰まる、ある意味最も難しいルールです。
また、ポーンは最後まで進むとプロモーションといって強い駒に昇格する事が出来ます。敵陣の奥まで来たら動けなくなってしまうので成って再び動けるようにするのが目的で将棋の成りと同じと考えれば分かりやすいです。大半は一番強いクイーンに成る事が多い(複数のポーンがクイーンに成るのもルール上問題ない)ですが、今後の展開を睨んでナイトに成るのも戦略の一つです。
キャスリングとその重要性
チェスの基本とコツ③
他にもポーンにはアンパッサンといって自分のポーンが5段目に進んでいて、相手のポーンが2マス進んだ場合のみその駒を取って斜め上に1マス進めるというルールがあります。そして、ポーンが関連するルール以外にもキャスリングという特殊な特殊な駒の動きがあり、こちらもチェスのゲーム運びに於いて重要な要素になります。

キャスリングとは入城という意味で、ゲームが動く中盤前にキングを安全なところに避難させる意味でも有用な手ではあります。ただ、チェスの中でも特に難しいルールなのでキャスリングが可能な条件だけ挙げると、キングとルークが一度も動いていない、チェックをされていない、そしてキングとルークの間に駒がなく、相手の駒の利きもないという3点です。
次にキャスリングを行う時の駒の動かし方ですが、キングを左右どちらかに2マス動かし、ルークをキングの隣に移動させます。また、チェスは触った駒を動かすのがルールなので手順として必ずキング、ルークの順番に動かさなければならないので注意しましょう。そして、キャスリングが使えるのは対局中一回のみなので(勿論義務ではありませんが)使いどころも大事なポイントです。
勝つための目安として重要な駒の価値
チェスの基本とコツ④
駒の動きと動かし方のコツを覚えた初心者のプレーヤーが次に意識すべき事は駒の価値です。将棋と違って持ち駒が使えないため駒を失った場合後々の展開に大きく響くので対局中もどの駒を生かし、どの駒を捨てるかといった取捨選択が重要になります。

取られたら終わりのキングを除く駒の価値はポーン1、ナイト3、ビショップ3、ルーク5、クイーン9とされています。勿論、自身の戦略によって自分の中での駒の価値は変わるので駒の価値は絶対的なものではありませんが、相手のビショップを取ってこちらのルークを失った場合マイナス2ポイントの喪失と、展開の有利不利を考える上での目安として役立ちます。
勝つために頭に入れておくべき基本
チェスの基本とコツ⑤

チェスは白が先手、黒が後手でゲームが始まります。統計上先手が有利と言われており、先手の方が勝率が高いのも事実ですが、勝つためには初心者だろうが上級者だろうが、先手後手関係なく自身のプランを実行する必要があります。

チェスの対局に於ける基本ですが、初心者が頭に入れておくべき要素は盤の中央を支配する、自分のキングを守る、そして勝つために全ての駒を活かす(駒の動かし方を覚えてフォーク、ピン、スキュアといったテクニックを使えるようにする)の3点です。
序盤を戦う時のコツ
チェスの基本とコツ⑥
チェスの初期配置は図のようになっています。a,b,c…や1,2,3…とふってあるのはマスをアルファベットや番号で表すためです。例えば頭に十字が乗っている駒がキングですが、白キングの位置は“e1”となります。 pic.twitter.com/ngoPB21C6d
— 慶應義塾大学チェスクラブ 新歓2018 (@keio_chess_2018) December 19, 2017
序盤の戦い方とコツの前に、棋譜の読み方を解説します。チェスの棋譜はアルファベットと数字が振ってあり、白のキングはe1、黒のキングはe8に配置され、プレーヤーはお互いのキングのチェックメイトを目標に戦います。

序盤の戦い方ですが、まずは中央を支配する事を考えます。中央を支配すれば自分の駒の自由度が高くなり、逆に相手に支配されたら攻め込まれて防戦一方になります。なので、勝つためには序盤の攻防で勝たなければなりません。まずは、序盤を戦う時のコツを解説します。
第1手で動かす、というか最初に動かせるのはポーンとナイトの2種類しかありませんが、ビショップとクイーンのルートを作るために基本的には1手目はdかeのポーンを(自分が白の場合はd3、d4、もしくはe3、e4に)動かすのがセオリーです。
キャスリングでキングを守る
チェスの基本とコツ⑦
その後ナイトとビショップを移動させ、f1とg1に空きが出来るとキャスリングが可能な条件が整います。勿論、キャスリングを行わなくても勝つ事は出来ますが、まだコツの掴めてない初心者が早々にピンチを招かないためにも守りを固めておき、キングが安全な状態から攻撃に集中する事が出来ます。
また、キャスリングは右だけでなく左側でも行う事が出来ます。右側で行う場合はキングをg1、ルークをf1に移動させますが、左側で行う場合はキングをc1、ルークをe1に移動させます。左側でキャスリングを行う時はクイーンを動かす必要も出て来るので基本は手間の少ない右側で行いますが、コツを掴んだ後の応用編として左側のキャスリングもあると覚えておいて損はありません。
最も激しく動く中盤のコツ
チェスの基本とコツ⑧
チェスで最も激しく動くのが中盤です。中盤は駒の取り合いになるので、前述した駒の損得の計算や、取られるにしてもただではやられない、自分の駒を取られても相手の駒を取って道連れにするような仕掛けを準備するなど常に頭を働かせる必要があります。
#アイソレイティッド・ポーン
— 世界のチェスBOT (@chess_xiangqi) April 21, 2018
一般的に弱いとされるポーンの形で、両隣りに味方のポーンがない、孤立したポーンのことを指します。敵に攻撃された場合、ポーン以外の駒で守るしか手がなく、通常このポーンは、その真上のマスも弱点になります。pic.twitter.com/sJPZ7d53Vk
また、チェスは戦略ゲームなので相手の弱点を狙うのが勝つためのコツです。例えば、他のポーンの支えがない駒や、孤立したポーンといった相手の弱いところを狙い、逆に自身の孤立しがちな駒を気にして取られそうになるのを防ぐのもポイントです。勿論、お互いの弱点を気にするだけでなく、チャンスがあれば駒を捨ててでも仕掛けるなど状況に応じた判断も必要です。
チェスのテクニックを覚えよう!
チェスの基本とコツ⑨
#フォーク
— 世界のチェスBOT (@chess_xiangqi) April 30, 2018
両取り。特に、クイーンとキングのフォークを「ロイヤルフォーク」、さらにルークも取れる場合「グランドフォーク」と呼ぶことがあります。チェスで最も楽しい瞬間の一つですね。 pic.twitter.com/He3ZdPBzcC
勝つためには、当然相手の駒を減らした方が有利になります。そのために駒を取るテクニックが必要ですが、チェスではaとbの駒を両方攻撃し、片方を確実に手に入れる事をフォークと呼びます。例としてf4のナイトをe6に動かすとキングかクイーンのどちらかが必ず取れます。このようなシチュエーションになるかはさておき、確実に駒を取るための基本テクニックです。
#ピン
— 世界のチェスBOT (@chess_xiangqi) April 25, 2018
ビショップやルークなどのラインピースで、敵の駒を動けないように釘付けすること。特にキングを的にしたものは絶対ピン、2つのピンが重なって十字型、X型になったものをクロス・ピンと言います。pic.twitter.com/WSYgvhFSZv
次に防御の要素も入ったテクニックですが、ビショップ、ルーク、クイーンといった飛び道具が活躍するテクニックをピンと言います。簡単に言えばビショップ、クイーンの飛び道具を後ろに控えさせて、f6のナイトが動いたらc3のクイーンでその先にあるキングを取る、だから動くなとナイトを釘付けした上に無力化させるテクニックで、ゲームを有利に進めるためのコツの一つです。
スキュア
— 慶應義塾大学チェスクラブ 新歓2018 (@keio_chess_2018) January 3, 2018
…自分の駒の利きのライン上にある複数の敵駒を同時に攻める手筋です。図は白ビショップが黒キングとクイーンをスキュアしています。キングは逃げなければいけませんが、クイーンがとられてしまいます。スキュアはビショップ、ルック、クイーンで行えます。 pic.twitter.com/u8UCe8W5eO
自分の駒の進行方向にある相手の駒を串刺しにするテクニックをスキュアと言います。飛び道具の駒が活躍するところからピンに似ていますが、相手の釘付けが目的のピンと比べてスキュアはより攻撃的で、相手の駒を取るのが目的です。この場合f3のビショップがd5のキングにチェックを掛けておりキングは逃げますが、逃げたらb7のクイーンを取られる、非常に強力な一手です。
チェスはゲームの展開に反比例して静かになる
チェスの基本とコツ⑩

将棋は持ち駒の活躍もあって終盤になるにつれて展開が激しくなり、局面が大きく動きます。しかし、チェスは終盤になるにつれて駒が少なくなり、静かに終わるのが特徴です。但し、駒が少ないからこそチェックメイトも難しくなり、両者の手元にどれだけ駒が残っているか、そして相手のキングをチェックメイトに追い込むための道筋が見えているかが重要になります。

終盤まで生き残ったポーンがプロモーション出来るのか、それだけで大きく流れも変わるし、成ったら厄介なポーンを処理するために相手が労力を割かざるを得ない状態に持ち込むだけでも大きく変わります。また、相手に強力な駒がない場合一番自由に動けるキングがむしろ最強となるので、キングを動かしつつ残った駒を使ってチェックメイトに持ち込むのも勝つための方法の一つです。
ステイルメイトへの持ち込み方
チェスの基本とコツ⑪
勿論、人間同士の勝負なのでセオリー通りに戦っても必ずしも勝つとは限りません。むしろ上級者が相手の場合はゲームが進むにつれて不利になる可能性の方が高いです。初心者の場合、勝つのが難しいと判断したら諦めてリザインを宣言するところですが、ステイルメイトに持ち込むチャンスが残っているのであれば勝負を諦める必要はありません。
自分の駒がd1のキングとe2のポーンのみ、相手の駒がc3のキングとe8のクイーンのみだったとします。ポーンをe3に動かし、クイーンがポーンを取ります。次は自分の番ですが、キングは自分から相手に取られに行く動きが出来ないため動けません。チェスにパスはない上に身動きが取れない(当然リザインもしない)ので、引き分けにせざるを得ない。これがステイルメイトです。
出したのは極端な例ですが、チェスに引き分けというシステムがある以上、次でチェックメイトとなる状態まで相手を誘導してステイルメイトに持ち込むのは自分の負けを消すという意味では完全に合法です。勝利寸前だった相手から見れば勝っているのに勝ちを消されるという、理不尽以外の何物でもないルールですが、負け試合を上手く引き分けに持ち込んだ作戦勝ちとも言えます。
基本とコツを覚えてチェスを楽しもう!
今回はチェスの基本をご紹介しましたが、マインドスポーツと言われるだけあってプロの世界は体力勝負である上に突き詰めようとすれば奥が深く、終わりのないゲームです。ですが、趣味として楽しむのであれば基本とコツを掴めばすぐに上達するので初心者でも気軽に楽しめる一面も持っています。

また、複雑なルールは数点のみで基本もコツも覚えるのは簡単なので、回数を重ねれば重ねるほど強くなれます。そして、初心者にとって自身の成長を感じられるところがチェスを楽しむ原動力となります。皆さんも基本とコツを覚えてチェスを楽しみましょう!