太宰治の作品・初心者におすすめなのは?ぐっと引き込まれる面白い小説!

教科書でもその名を目にする太宰治は、作品はもとよりルックスや生き様から、没後70年となった現在でも多くの人を惹きつける存在です。太宰治の名前は聞いたことがあるけれど作品は読んだことがないという人のために、読みやすいおすすめの短編小説などをご紹介していきます。

目次

  1. 初心者でも読みやすい!おすすめの太宰治作品
  2. 豊かな感性と技巧的な構成!太宰治作品の魅力
  3. 死に惹かれる心の闇
  4. 思春期の赤裸々な乙女心!ある少女の一日
  5. 名誉と友情のために!命をかけて走る男の熱い物語
  6. 人気画家となった夫への妻からの決別状
  7. 人であるが故の滑稽さと情けなさを凝縮した短編
  8. したたかに生きる妻と放蕩夫の不思議な夫婦関係
  9. 頭にひびく音の連なりが奇妙な余韻を残す短編小説
  10. 太宰治が独自の視点で語るユーモアに満ちた昔話
  11. 犬嫌いの主人公と太宰治が重なる悲しくも優しいお話
  12. 実際の心中未遂事件をモチーフに描かれた短編
  13. 音で聞きたい津軽方言の昔語り
  14. 笑いの真骨頂!太宰治の笑いのセンスが凝縮された短編
  15. 太宰治が大いに語る恋愛論
  16. おとぎ話のような美しくも悲しい姉妹愛の物語
  17. よき家庭人になりきれなかった太宰治の苦悩
  18. 暗さの中に主人公の気高さが光る!完成度の高い太宰作品
  19. 小説の中でリレー形式で展開する物語
  20. 太宰治のルーツがわかる紀行文
  21. 自意識爆発!自虐的にデフォルメされた半自伝的小説
  22. 食わず嫌いは損!今ぜひ読むべき太宰治作品

初心者でも読みやすい!おすすめの太宰治作品

太宰治は芥川賞作家となった芸人の又吉直樹さんがリスペクトしている作家ということで、最近になって作品が見直されることも増えているようです。中学や高校の国語の教科書にも作品が掲載されていることから、教科書で初めてその作品に触れたという人も多いでしょう。

文学の世界で戦後無頼派の旗手として注目されたこともあり、歴史の教科書にも名を刻んでいます。太宰治の代表作としてよくその作品名が挙げられるのは「人間失格」や「斜陽」です。どちらも特に長い小説ではありませんが、全体的に雰囲気は暗く、文体や言い回しが古い部分もあり、とっつきにくさを感じて読むのを敬遠する人もいるかもしれません。

kayohiyononさんの投稿
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太宰治は亡くなるまでの15年ほどの執筆活動の間、多くの作品を残しています。その中には、今読んでも新鮮に感じられる、ユーモアに溢れた面白いものや、ほろりとさせられるものも。太宰治初心者の方は、まずは読みやすい短編小説から読み始めてみてはいかがでしょうか?

ladybug6_9さんの投稿
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豊かな感性と技巧的な構成!太宰治作品の魅力

太宰治といえば暗い作品が多いというイメージがあるかもしれませんが、それは「人間失格」や「斜陽」といった太宰治の代表作と言われる作品からくる印象であり、太宰治の作品の一つの傾向でしかありません。

hoyomomoさんの投稿
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太宰治は小説を書くときに構成を凝ることが多く、「人間失格」ではまず「私」という一人称で小説が始まり、「私」がある男の手記を紹介するという形で、物語の本編に入っていきます。「人間失格」と同名の主人公が出てくる「道化の華」では、小説家である「僕」が考えるストーリーとして大庭葉蔵という名の主人公を軸に物語が進み、ところどころに「僕」の小説論考が挟まれます。

「お伽草紙」では娘に絵本を読み聞かせる父親が、心の内に昔話を元にした別個のストーリーを展開させるという設定になっています。また、太宰治は女性一人称で小説を書くのも得意で、「女生徒」「きりぎりす」「ヴィヨンの妻」「斜陽」などは女性の一人称の形式で書かれています。

emakko118さんの投稿
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死に惹かれる心の闇

太宰治は自殺未遂、心中未遂を繰り返したことでも知られています。太宰治が故郷の津軽半島を巡った紀行文「津軽」の中では、太宰が「正岡子規三十六、尾崎紅葉三十七…芥川龍之介三十六」と文士と言われた人々が自殺した年齢を羅列するくだりがあります。

太宰治は才能に恵まれながらも自身を否定的に見る傾向があり、慢性的な生きづらさを抱えていました。他の作家たちの自殺の影響もあり、自らの作品を完結させるのは自身の死しかないとの思い込みもあったのかもしれません。

yasuhikohattaさんの投稿
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4度の自殺・心中未遂の末、5度目となる愛人との心中は未遂には終わらず、太宰治は帰らぬ人となります。38歳という若さでしたが、既に当時流行作家となっていた太宰治は多数の著作を世に残しています。

siopon_zuさんの投稿
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思春期の赤裸々な乙女心!ある少女の一日

太宰治のおすすめ短編作品1:女生徒

主人公の少女の語りで、朝起きてバスに乗って学校へ行き、級友と話をし、家に帰って寝るというごく普通の一日が描写されます。主人公の少女がその時々にいろんなことを考え妄想するのが面白い、ごく短いお話です。

mari_is_nerdさんの投稿
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太宰治が一種潔癖過ぎるこの年代の乙女の心理を、読者に不自然を感じさせずに描写していることに驚かされます。こういう女性心理を理解できる男性だからこそ、太宰治は多くの女性に愛されたのでしょう。思春期特融のみずみずしさと負の感情をうまくとりまぜた描写で、読者を最後まで惹きつけます。

発想が面白いこの新感覚の小説は川端康成も絶賛したといいます。すらすらと読めて感情移入もしやすく、太宰治初心者におすすめの短編です。

名誉と友情のために!命をかけて走る男の熱い物語

太宰治のおすすめ短編作品2:走れメロス

keisuke_kouzukaさんの投稿
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「走れメロス」は中学校の国語の教科書に掲載されていたこともあり、初めて読んだ太宰作品がメロスであった、という人も多いことでしょう。教科書に掲載できるサイズの短編であり、感想文を求められる題材となることからも、初心者でも読みやすい物語であると言えるでしょう。

死刑宣告を受けるも、妹の結婚式に参列するために友を身代わりとし、三日間の猶予をもらい走りだすメロス。無事結婚式に参列し、身代わりとなった友を救い自ら処刑されるために走り続けます。途中川を渡るときに濁流にのまれかけ、山賊に襲われるなどの苦難に遭うメロス。それでもなんとか王城に辿り着き、危うくメロスの代わりに処刑されるところだった友を救います。

madder1995さんの投稿
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戻れば殺されるのがわかっていながら、友のため約束を守り帰ってきたメロスを見て、暴君であった王は回心し、処刑をとりやめるのです。友情と人を信じることの素晴らしさを書いたこの短編は、暗い話の多い太宰治作品の中では極めて直球の、ハッピーエンドとなるお話です。読みだすとテンポよく最後まで一気に読めてしまう、太宰治初心者向けのストーリーです。

tricca.daigoさんの投稿
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人気画家となった夫への妻からの決別状

太宰治のおすすめ短編作品3:きりぎりす

夫に宛てた書簡の形式で書かれた短編です。夫は結婚前は貧乏な画家であり、妻は結婚に反対され半ば家出のようにして夫と一緒になりました。もっとよい縁談もあったのですが、私はあなたでないと嫌だったのですと、少々恩着せがましくも感じる言い回しに、妻のプライドが垣間見えます。

pesoreaderさんの投稿
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貧乏生活を苦にすることもなく、工夫して楽しく暮らしていた妻でしたが、夫が画壇で認められ金廻りがよくなると、恵まれた生活に不満を感じるようになります。あなたは変わってしまった、と妻は別れを決意し、夫に対して内心を暴露した手紙をしたためるのです。

人間としての誇りを失ったあなたとこれ以上共に生きていくことはできない、と妻は手紙を締めくくるのですが、果たして夫がそれほど非難されるべき卑しい人格の人間なのかというところに疑問が残ります。人気者になった夫を独占できなくなった妻が、嫉妬心を膨らませ、ついには自ら別れを切り出した、というようにもとれます。

太宰治は「斜陽」でも誇り高き没落した上流家庭の女性を書いていますが、「きりぎりす」では「斜陽」の主人公とはまた違った、心の闇を抱えた女性の姿が浮かびます。このような一種鬼気迫る女性心理は、太宰治が交際相手から学んだものなのかもしれません。

juntiiiyさんの投稿
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人であるが故の滑稽さと情けなさを凝縮した短編

太宰治のおすすめ短編作品4:あさましきもの

太宰治の短編の中でも特に短い作品です。作中では情けなくも面白い三つのエピソードが語られます。「弱く、あさましき人の世の姿を、冷く三つ列記」とありますが、物語の中の人物に向ける太宰治の視線は案外温かみがあります。

hananosinpanさんの投稿
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「人間失格」の中に、この「あさましきもの」のモチーフが挟み込まれていることもあり、太宰治自身お気に入りの話であったようです。とにかく短くて読みやすいお話なのですが、太宰治の雰囲気がしっかりと感じとれる、太宰治初心者におすすめの短編です。

したたかに生きる妻と放蕩夫の不思議な夫婦関係

太宰治のおすすめ短編作品5:ヴィヨンの妻

文学界においては、「人間失格」や「斜陽」と並べてこの「ヴィヨンの妻」を太宰治の代表作と見る向きもあるとのこと。逆境に陥りながらもたくましく生きる妻と、気が弱く現実から目を背け酒に溺れて生きる夫との不思議な絆が面白い、初心者向けの読みやすい短編です。

gemini.blue.5さんの投稿
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自称詩人の放蕩夫が深夜酒気を帯びて帰宅し、部屋の引き出しを漁るところから物語は始まります。夫が探していたのはジャックナイフ。ほとんど金を払わずに無銭飲食を繰り返していた料理屋の夫婦からさらに金を盗み、逃げ帰ってきていたのです。

途方に暮れる妻ですが、土壇場で追い詰められて却って度胸がついたのか、なんとか警察沙汰にせずに事をまとめ、夫の返しきれない借金返済のために、夫が金を盗んだ料理屋で働くようになります。妻はろくでなしの夫にほれ込んでいるようで、たまに夫が料理屋に顔を出すことを喜び、一緒に家路に着く幸福を噛みしめます。

「ヴィヨンの妻」というタイトルは、酒や女にだらしない主人公の夫・大谷を、放蕩の詩人フランソワ・ヴィヨンに見立ててつけられたものということです。「生まれたときから死にたかった」と語る大谷は、自殺や心中未遂を繰り返し、ついには38歳の若さで愛人と心中を果たした太宰治自身が投影された人物のように見えます。

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頭にひびく音の連なりが奇妙な余韻を残す短編小説

太宰治のおすすめ短編作品6:トカトントン

新潮社の「ヴィヨンの妻」に収録されている短編です。終戦を機に「トカトントン」という奇妙な音が頭の中で鳴るようになった青年。何かしら情熱を傾けることがあっても、その感情のピークとなる時に必ず「トカトントン」という幻聴が響き、その音を聞いたら最後、情熱は全て消えうせてしまうのです。

この短編では戦争に対する太宰治のニヒルな見方が垣間見えます。戦時中は戦争に熱狂しお国のために命を落とすべきとされていたのに、戦後は180度態度を変える人々。太宰治の「トカトントン」はそのような人々に対する揶揄のようにもとれます。「トカトントン」の響きが面白い、初心者向けのボリュームの短編です。

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太宰治が独自の視点で語るユーモアに満ちた昔話

太宰治のおすすめ短編作品7:お伽草紙

誰もが知っている昔話を太宰治流の解釈でアレンジした、ユーモアに満ちた作品集です。「瘤取り」「浦島さん」「カチカチ山」「舌切雀」の4つの物語が収められています。太宰流の浦島太郎は、これまで気にもとめなかった主人公の家族構成や家族内における立ち位置など、細かい設定が作られているのが面白い作品です。

太宰治流の浦島太郎は理屈っぽい性格の持ち主。太郎が助けた亀が、お礼に竜宮城にお連れするので甲羅に乗ってくださいと申し出ても、甲羅に乗るなど風流でない、竜宮城などあるわけがないなど、あれこれ理屈をつけて亀の言うことを信じようとしません。最後、竜宮城から持ち帰った玉手箱を開けておじいさんになってしまった浦島太郎に対する太宰治の深い考察が語られます。

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特筆すべきは「カチカチ山」です。太宰治が創作するカチカチ山では兎は少女で、狸はその少女に恋する中年の醜男という面白い設定になっています。カチカチ山の元々の話は、畑の作物を盗み捕まった狸が、捕まえたお爺さんに復讐するためお婆さんを殺すという残酷なものです。そのまま絵本にすると出版できなくなるため、子ども向けのお話では狸がお婆さんにいたずらをした程度に書き換えられています。

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しかしそれに対しての報復としては、兎が狸の背に火をつけたり、泥船に乗せて溺れ死にさせたりするのはやり過ぎであると太宰治は考えるのです。そして兎が、太宰治がこの世で最も残酷だとする16歳の処女で、狸が醜い中年男性であれば、度を越えた復讐にも納得がいくと結論づけるのです。

好色に対する戒めという体をとる話になっていますが、太宰治の物語を紡ぎ出す才能がいかんなく発揮された一篇となっています。お伽草紙の中の話はどれも、よく知られた昔話を下敷きにして創作されており、太宰治初心者でもすんなりお話の中に入っていけるのではないでしょうか?ただし、中身は太宰流の風刺に満ちたものである点をお忘れなく。

犬嫌いの主人公と太宰治が重なる悲しくも優しいお話

太宰治のおすすめ短編作品8:畜犬談

「私は、犬については自信がある。いつの日か、かならず喰いつかれるであろうという自信である」という冒頭部分がとにかく絶妙!太宰治は書き出しでぐっと読書の心を惹きつけるのが得意な作家ですが、この「畜犬談」も冒頭から一気に読み進んでしまいます。

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ストーリーは、犬嫌いの主人公が何の因果か犬を飼うことになり、嫌っていた犬に振り回されるという、それだけといえばそれだけのお話です。けれど、一家のものと思えない、と成り行きで飼うことになった犬を嫌いながらも、ポチという名前をつけ、徐々に犬に対して愛情を持つようになるくだりはおかしくもほっこりさせられます。

随所に太宰治流のユーモアが散りばめられておりとても読みやすく、太宰治初心者におすすめできる短編となっています。太宰治のユーモア感覚に惹かれて太宰作品を読み始めた人たちに特に支持されている作品です。

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実際の心中未遂事件をモチーフに描かれた短編

太宰治のおすすめ短編作品9:道化の華

「道化の華」は自らが起こした心中未遂事件をモチーフとして創作されたもので、主人公の葉蔵には太宰治自身が強く投影されています。葉蔵という主人公の名前は太宰治の代表作「人間失格」の主人公と同名です。太宰治初心者はいきなり「人間失格」を読むのではなく、まずこちらを読んでみるのがおすすめです。

hananosinpanさんの投稿
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「道化の華」は太宰治の短編を集めた処女作品集に収められている短編です。作品集のタイトルである「晩年」は全体のタイトルであり、この中に「晩年」と題された短編はありません。「晩年」というタイトルがつけられたのは、これを遺書のつもりで書いたからと、後年太宰治自身がエッセイで述べています。

音で聞きたい津軽方言の昔語り

太宰治のおすすめ短編作品10:雀こ

井伏鱒二に捧げられた津軽弁のリズムが心地よい寓話です。北国の自然の情景が感じられる語りは、ぜひ耳で聞いて味わってみたいと思わせる趣があります。こちらも作品集「晩年」に収められています。

作品集「晩年」は遺書として書かれたというだけあって、全編を通じて死の影が漂う暗い話が多いのですが、所々面白いくだりもあり、決して読後感は悪くありません。太宰治作品のアンニュイな雰囲気を感じとれ、また一つ一つのお話が短く読みやすいことから、初心者にもおすすめできる作品集になっています。

笑いの真骨頂!太宰治の笑いのセンスが凝縮された短編

太宰治のおすすめ短編作品11:黄村(おうそん)先生言行録

「黄村先生言行録」は3部作となる「黄村先生シリーズ」の第1作ですが、変わりものの先生の言動に弟子が振り回される面白いお話で、自虐的で陰鬱な話の多い太宰治にしては珍しく暗さを感じさせない面白い作品となっています。山椒魚に夢中になる一風変わった先生は、実生活でも太宰治の師であった井伏鱒二をモデルにしていると言われています。

第2作の「花吹雪」、第3作の「不審庵」と続く黄村先生シリーズはどれも面白い作品で、初心者でも苦手意識を持たずに読めるのではないでしょうか?このシリーズは「津軽通信」という作品集に掲載されていますが、この作品集にはユーモラスで軽妙なものが多く、太宰治初心者向けの読みやすい作品集となっています。

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太宰治が大いに語る恋愛論

太宰治のおすすめ短編作品12:チャンス

短編集「津軽通信」に収められた、太宰治が考える恋愛についてのエッセイです。自分が恋愛というものを定義するなら、「恋愛とは好色の念を文化的に新しく言いつくろいしもの」とする、といった歯に衣着せぬ持論が展開されます。後半には雀焼きを食べたいがためにせっかくのチャンスを自ら棒に振ってしまった、という実話だか創作だかわからない話が綴られます。

ユーモラスでシニカルな太宰節が炸裂し、太宰治が自らを指して「三十余年間の好色生活」とするなど面白いくだりもあり、初心者でも楽しんで読むことができます。太宰治には他に「津軽」という著作もありますが、こちらは紀行文であり「津軽通信」とはまた違った趣の書籍になっています。

urosgfm77さんの投稿
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おとぎ話のような美しくも悲しい姉妹愛の物語

太宰治のおすすめ短編作品13:葉桜と魔笛

タイトルが秀逸な太宰治初期の作品です。死に向かう病の床にある妹のために、偽りの手紙をしたためる姉。けれど、妹も実は姉に嘘をついていたのです。姉妹の愛情と若くして死にゆく妹の淋しさ、死に対する恐れが胸にささる、悲しいけれど心に迫る物語です。

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「女生徒」と同じ1939年に書かれた作品で、悲しいストーリーながら「女生徒」と共通するみずみずしさも感じられます。同じ年に太宰治は亡くなるまで連れ添った石原美知子と結婚しており、結婚生活が死に惹かれる太宰治にひとときの安息をもたらし、若々しさを内包する希望を感じさせる物語の着想につながったのではないでしょうか?

hananosinpanさんの投稿
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よき家庭人になりきれなかった太宰治の苦悩

太宰治のおすすめ短編作品14:桜桃

作家である主人公には3人の子どもがあり、しかも長男には知的障害の疑いがある…と、かなり太宰治の実像に近い人物設定になっています。家では何の役にも立たない情けない父親は、本心はどうであるかはさておき、子より親が大事と思おうとし、飲み屋で出された桜桃を子どもに持ち帰ることもせずに食べ続けます。

neirannさんの投稿
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ごく短いお話ですが、家族を大事に思いながらもよき家庭人にはなりきれない、太宰治のやりきれなさが的確に表現されています。「人間失格」の前に書かれた作品で、文中の「自殺の事ばかり考えている」という一文が読む人の心に刺さります。

暗さの中に主人公の気高さが光る!完成度の高い太宰作品

太宰治のおすすめ作品:斜陽

短編を読んで太宰治作品に興味を持ったなら、次にぜひ読むことをおすすめしたいのが「斜陽」です。元々は上流階級の出であった主人公が、戦後の貴族制度の廃止に伴い家や財産、さらには大切に思う人たちを次々と失っていきます。

gemini.blue.5さんの投稿
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とても明るいとは言い難い話なのですが、主人公かず子が苦難に満ちた人生を歩みながら、身分は捨てても高貴な心を持ち続け、前を向いて歩いていく様が清々しく、心に残る作品です。どうあっても貴族であり続ける母親を、主人公かず子の視点から描写した文体は上品で、暗い時代にありながらそこだけが光りを放つかのような美しさがあります。

aozora_shayouさんの投稿
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女性の視点で小説を書くのは太宰治が得意としたことですが、「斜陽」はその中でも特にヒロインの生き様が魅力的なストーリーになっています。長編小説ですが文庫本にして二百ページに満たないボリュームなので、太宰治初心者でも読みやすい小説です。

yoko.1969さんの投稿
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小説の中でリレー形式で展開する物語

太宰治のおすすめ作品:ろまん燈籠

個性的な5人兄弟がそれぞれラプンツェルのお話を独自に解釈し、リレー形式で物語を展開させていくという面白い構成になっています。この5人兄弟がそれぞれが語る物語には各自の性格が反映されているのが、太宰治の作家としての腕の見せどころです。

chi1996.booksさんの投稿
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文句を言い合いながらも仲の良い5人兄弟の創作活動をその祖父や祖母、母も支援し、ところどころに挟みこまれる家族のエピソードがユニークでほっこりする、太宰治作品の中では暗さや悲壮さを感じさせない面白い作品になっています。

mk_messygirlさんの投稿
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太宰治のルーツがわかる紀行文

太宰治のおすすめ作品:津軽

太宰治が3週間かけて自身のルーツである青森を旅し、執筆された紀行文です。感情的にならないように客観性を持って書かれていますが、随所に太宰治の故郷に対する想い・愛着が見え、太宰治の人間性を深く感じることのできる作品となっています。

太宰治が故郷において過剰なおもてなしを受ける面白い場面もあり、津軽の人を寄せつけない風景の描写なども太宰流のエッセンスが効いています。クライマックスとなる乳母のたけとの再会シーンでは、太宰治が心の平安を得る様子が描かれており、いつもの自意識が高くシニカルな太宰とはまた違う一面を見ることができます。

自意識爆発!自虐的にデフォルメされた半自伝的小説

太宰治のおすすめ作品:人間失格

有名な作品なのでタイトルは聞いたことのある人も多いのではないでしょうか?全編を通じて暗く陰鬱な雰囲気が漂い、人によって好き嫌いが分かれる作品であると言えるでしょう。太宰治初心者がいきなり読むのはおすすめできませんが、いくつか短編を読んで太宰の作品に興味を持った場合は、ぜひ読んでもらいたい小説です。

heiyuyさんの投稿
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「人間失格」は太宰治の死のひと月前に書き上げられた小説で、実際に太宰治が起こした心中未遂事件のくだりが書かれるなど自伝的要素も強く、遺書として書かれたのではないかという見方もあります。冒頭の<はしがき>でハンサムではあるが不吉な匂いのする男性のことが語られ、その後その男性自身の手によるとされる三部の手記が続いていきます。

paloalto1989さんの投稿
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この主人公には太宰治自身が強く投影されており、有名な手記の冒頭「恥の多い生涯を送ってきました」という一文は、まさしく太宰治がこれまでの人生を振り返って心に浮かんだ正直な気持ちであると言えるでしょう。

suna_uhoさんの投稿
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主人公がどんどん落ちて行く救いようのない話に息苦しさを感じる人もいれば、その主人公の心の闇に寄り添えるものを感じ、共感する人もいるようです。好き嫌いはありますが、太宰治の数ある作品の中でも傑作であることに間違いはなく、太宰治の本質が自身の手によって歪められながらも、痛いくらいに赤裸々に小説の中で描き出される様は圧巻です。

su._._.jungさんの投稿
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食わず嫌いは損!今ぜひ読むべき太宰治作品

ぐっと引き込まれる太宰治の短編や面白い作品をご紹介してきましたが、いかかでしたでしょうか?「人間失格」から読み始めて挫折した人は、ぜひ太宰治のユーモアのセンスが光る短編から再読していくことをおすすめします。

kichigooharuさんの投稿
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太宰治作品は既に著作権の保護期間が終了しているため、作品は全て青空文庫というインターネットのサイトで閲覧することができます。スマホでも読むことができるので、まずは読みやすい短編から太宰治作品を読み始めてみてはいかがでしょうか?読むほどに味わい深く、没後70年となった現在でも多くの人にその作品が支持されている理由がわかるはずです。

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